世界水泳を見ていたとき、「NAB」という見慣れない国コードに気づいた方もいるのではないでしょうか。
USAやJPNのように国を示すものかと思いきや、地図で「NAB」という国は見当たりません。
そんなNABとはどこの国なのか?
この記事では、謎の略称「NAB」について、その意味や背景、選手の活躍までを深掘りしていきます。
NABとはどこの国?世界水泳で使われている意味とは
世界水泳では国ごとに選手が出場しており、一般的に3文字の略称で国名が表示されます。
しかし「NAB」は他の略称とは明らかに雰囲気が異なり、聞きなじみのない人も多いはずです。
ではこのNABはどこを意味しているのでしょうか?
答えにたどり着くためには、国際競技の裏側にある事情を知る必要があります。
NABの正体は「中立のロシア選手」
「NAB」は正式な国名の略ではなく、2025年世界水泳で使用された中立選手用コードのひとつで、正確には「Neutral Individual Athletes – Swimming」を指します。
主にロシア出身の選手たちが、国を名乗ることなく個人資格で出場する際にこの表記が用いられました。
オリンピックでの「ROC(ロシア・オリンピック委員会)」や「ANA(Authorized Neutral Athletes)」と同様、政治的事情によって国としての参加が制限されている中での措置です。
なぜロシアではなくNAB表記なのか?背景を解説
そもそも、なぜロシアは自国の名前で出場できないのでしょうか?
理由は、2022年に始まったロシアによるウクライナ侵攻にあります。これを受けて多くの国際競技団体がロシアに対して制裁を行い、国名・国旗・国歌の使用を禁止しました。
その結果、ロシアの選手は「国家を代表しない中立の立場」での参加のみが認められるようになりました。これが「NAB」という形での出場につながっています。
ただし、「NAB=Neutral Athletes B」という正式名称や、「Bがロシアを意味する」という公式説明は存在せず、一部メディアやSNSの解釈に基づく非公式な見解にすぎません。
NAB(ロシア)が中立選手として出場している理由
NAB(ロシア)が中立選手として出場している理由やルールについては以下になります。
ウクライナ侵攻と国際大会での制裁措置
ロシアは過去にもドーピング問題などで「中立扱い」での参加を強いられたことがありますが、今回の「NAB」はより政治的な背景によるものです。
国際水泳連盟(World Aquatics)は、ロシアの団体としての参加を認めない一方で、「個人の選手が政治に関係なく競技を続けられるようにする」という立場から、厳格な審査を経た選手のみ中立枠としての参加を許可しています。
国名・国旗・国歌が禁止されるルールとは?
「NAB」の選手たちは以下のような制約のもとで出場しています。
- ロシアの国名(Russia)は表示されない
- 国旗は掲揚されない
- 表彰式での国歌は演奏されない
- 中立を示す白地のユニフォームまたはWorld Aquatics指定の装備を着用
つまり、「どこの国の選手か」は公式には表示されず、純粋に“競技者個人”としての参加となっているのです。
NABとして出場したロシア選手の活躍
メダル獲得数や注目選手を紹介
2025年7月にシンガポールで開催された世界水泳では、「NAB」という名称で出場している中立選手団が大きな注目を集めました。
NABは特定の国名ではなく、主にロシア出身の選手たちが中立資格で参加する際に用いられる表記です。
ただし、「出場選手数59名・メダル10個(金3/銀4/銅3)」という情報は現時点では一部報道・SNSなどの推計に基づいたものであり、国際水泳連盟による正式な最終リザルトはまだ確定していません。したがって、数字を断定することは避けるべきです。
▶ 注目のメダリスト・好成績選手
以下の選手たちが特に注目を集めました:
- 🏊♂️ アレクサンダー・マリツェフ(アーティスティックスイミング)
- 男子ソロ・テクニカル決勝で金メダルを獲得。
- 男性AS競技の先駆者として国際的な評価を得ています。
- 🏊♂️ キリル・プリゴダ(競泳/男子50m平泳ぎ)
- 銀メダルを獲得。
- 力強い泳ぎとテンポの速さが印象的でした。
- 🏊♀️ ダリア・クレピコワ(競泳/女子100mバタフライ)
- 準決勝を2位通過し、決勝へ進出。
- メダルには届かなかったものの、スピードと安定感のある泳ぎで観客を魅了しました。
なお、「男子400m混合メドレーリレーでNABが金メダルを獲得した」という一部の噂については、公式リザルトにそのような記録はなく、事実ではありません。
加えて、挙げられたメンバーに女子選手(ダーリア・チクノバ)が含まれていたことからも、男子リレー出場としての構成はルール上誤りです。
▶ NAB注目選手一覧(競泳中心)
選手名 | 専門種目 | 実績・注目ポイント |
---|---|---|
クリメント・コレスニコフ | 背泳ぎ | 元ロシア代表。世界記録保持者経験あり |
キリル・プリゴダ | 平泳ぎ | 銀メダル獲得。世界トップクラスのスプリンター |
ダリア・クレピコワ | バタフライ・平泳ぎ | 二種目で世界上位。将来有望な若手選手 |
アレクサンダー・マリツェフ | AS男子ソロ | ロシア初の男子AS選手。世界水泳で金メダル獲得 |
これらの選手たちはかつてロシア代表として世界を舞台に戦ってきた経験を持ち、NABという形式になった現在でも、その実力はまったく衰えていません。
政治的な事情で国の名を背負えない状況でも、NABの選手たちはスポーツへの真摯な姿勢と圧倒的な実力で観る者の心を掴んでいます。中立という制約を超え、純粋に競技で評価される存在として、今後もその活躍から目が離せません。
なぜ「NAB」というコードが使われているのか?
Neutral Athletes Bの「B」の意味とは?
一部で「Bはロシア、Aはベラルーシを示す」という見解もありますが、大会公式資料ではこのような定義は示されていません。
事実として、2025年大会では「NAB=ロシア系中立選手」「NAA=ベラルーシ系中立選手」という使い分けはなされていましたが、それぞれの頭文字が具体的な国を示しているという裏付けは公式にはなく、分類記号として便宜的に使用されていると考えられます。
今後のNABの扱いとロシア代表復帰の可能性は?
ロシアのスポーツ界は、制裁の解除や国際的な復帰に向けて働きかけを続けていますが、現時点では正式な代表としての出場は認められていません。
2024年パリ五輪ではIOCが「個人資格での中立選手」枠を設けたように、今後も他競技において「NAB」のような中立扱いが続く可能性があります。
国際社会の動向や戦争終結、国際スポーツ団体の判断が、今後のロシア選手たちの立場を左右することになりそうです。
まとめ
「NAB」という表記は、国ではなく、主にロシア出身選手が中立資格で出場するために用いられたコードです。
政治的な制約の中でも、実力を発揮し続ける選手たちの姿は、多くの人にとって印象的だったのではないでしょうか。
世界水泳では競技の純粋さと、世界情勢が交錯する現実が同時に存在しています。
今後の「NAB」の動向にも、引き続き注目が集まりそうです。
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