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公務員は公用パソコンを私的利用できる?情報開示は違法?

公務員は公用パソコンを私的利用できる?情報開示は違法?

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兵庫県の公用パソコンの私的情報が漏洩したことが報道され話題になっています。

そこで気になったのが公務員は公用パソコンを私的に利用してもいいの?ということ。

このニュースを見て、SNSでも以下のような疑問を持った方も少なくありませんでした。

  • 「公務員って公用パソコンって私的利用してもいいの?」
  • 「公用パソコンの私的情報ってプライバシーとして守られるの?」

そこで本記事では、公務員による公用パソコンの私的利用をテーマに、法律・規定・判例・実例をもとにわかりやすくまとめてみました。

目次

公務員は公用パソコンを私的利用できる?

結論から言うと、公務員が公用パソコンを私的利用するのは「原則として禁止」です。

これらの規定により、公務員は「職務に専念する義務」および「職務に関連しない行為を業務時間中にしない義務」を負っています。

さらに各省庁・自治体では「情報セキュリティポリシー」や「職員行動規範」で、業務端末の私的利用を明確に禁止または制限していることが多く、例外的に認める場合でも明文化されたルールに基づく必要があります。

公務員の公用パソコン私的利用が発覚した過去の事例!

過去にも公務員の公用パソコン私的利用が発覚し懲戒処分に至るケースがありました。

事例1:ネットショッピングの頻繁な利用(2018年・奈良県橿原市)

  • 処分:戒告
  • 概要:業務時間中にAmazon等で私的な買い物を繰り返した50代の市民課係長。人事監察により発覚し、戒告処分に。ログ調査で発見され、本人も事実を認めた。

事例2:私用SNS利用による停職(2020年・兵庫県明石市)

  • 処分:停職1ヶ月
  • 概要:40代の福祉部主任が業務用パソコンでTwitterを日常的に利用し、私的投稿を繰り返していた。市民からの指摘により調査が入り、ログ記録から勤務時間中の私的利用が明らかとなり、停職処分に。

事例3:オンライン動画の視聴(2017年・東京都世田谷区役所)

  • 処分:減給処分(10分の1、1ヶ月)
  • 概要:30代の財政課職員が、公用PCを使用してYouTubeなどの娯楽コンテンツを頻繁に閲覧。セキュリティリスクもあり、内部監査の結果、減給処分が下された。

公務員の公用パソコン私的利用はどうしてバレる?

業務用パソコンの私的利用が発覚する背景には、日常的に行われているログの収集・監査体制が存在します。

公務員が使用する公用端末は、個人の所有物ではなく「行政資産」であるため、使用履歴は記録・監視の対象となるのが原則です。

たとえば、次のような情報が自動的に記録されていることがあります。

  • Webアクセスログ(どのサイトを閲覧したか)
  • メール送受信履歴(日時・件名・宛先)
  • 操作ログ(アプリ起動・ファイルアクセス・印刷など)

こうしたデータは、万が一不正使用や内部通報があった際に証拠として使用されるだけでなく、情報公開法に基づく開示請求の対象になることもあります。

つまり、「誰が・いつ・何をしていたか」という記録が、公的に開示される可能性があるという点で、公務員の公用PC利用は極めて透明性の高いものといえます。

公務員が公用パソコンで私的に扱った個人情報はプライバシー侵害になるのか?

「自分が送った私的なメール」や「SNSの下書き」「買い物履歴」など、公用パソコンで触れた私的情報の情報開示はプライバシー侵害になるのでは?と思う方もいるのではないでしょうか。

ここでは、そうしたケースが実際にプライバシーの侵害とみなされるのか、裁判例の考え方を紹介します。

公務員による公用パソコンの私的利用におけるプライバシーの期待と限界(裁判例)

  • 公務員は勤務中の行為について、原則としてプライバシーの期待を有しないとされています。
  • 職務に直接関係しない内容でも、業務用端末を使用していれば「公的資産を通じた通信」と判断され、開示対象になることがあります。
  • ただし、個人宛の私信であったり、極めて私的かつ機微な個人情報であると判断された場合は、部分的に黒塗り・非開示となることも。

以下が過去にあった判例になります。

美浦村職員損害賠償請求事件とプライバシー権の判断(公務員関係判例研究会)

平成27年に開催された公務員関係判例研究会では、「美浦村職員損害賠償請求事件」(水戸地裁平成24年9月14日判決)が取り上げられました。

この事件では、公用パソコンに保存されたデータを職場が強制的に調査・開示したことが、プライバシー権の侵害に当たるかが争点となりました。

裁判所は、

  • 公用パソコンは私的使用が禁じられているもので、私的文書の保管は想定されていない
  • 調査目的は職務専念義務違反の確認という正当な理由によるもの
  • 端末調査はあらかじめ情報セキュリティポリシーに定められ、周知されていた

以上を理由に、プライバシー権侵害には当たらないと判断しました。

控訴審の東京高裁(平成25年3月13日)もこの判断を支持しています。

この判例からも、公用パソコンの利用状況調査があらかじめ制度化・周知されていれば、本人の同意がなくてもプライバシー権の侵害とされにくいという実務的な指針が確認できます。

また同研究会では、パソコンとロッカーなどの「貸与物の性質の違い」にも言及。

公用PCは業務目的の機器であるため、合理的な理由があれば同意なしで調査してもプライバシー侵害に当たらないと整理。

一方、私物管理用ロッカーは原則として同意が必要との見解も示されています。

私的メールの開示が認められたケース(東京地裁平成27年9月28日判決・平成26年(行ウ)第14号)

  • 東京都教育委員会の職員が業務用メールを通じて送受信した内容が、市民の情報公開請求で対象に。
  • 裁判所は「業務用メールで勤務中に送られたものは私人のプライバシーにはあたらない」と判断し、開示を認めました。

つまり、「業務用PC=プライバシーが完全に失われる」というわけではありませんが、私生活に比べてプライバシー保護の範囲は明らかに限定的であることを理解しておく必要があります。

地方公務員が公用端末で不適切動画を閲覧(大阪地裁平成24年3月16日判決・平成23年(行ウ)第112号)

  • 大阪府の男性職員が、公用パソコンでアダルト動画を複数回閲覧。
  • 処分:懲戒免職
  • 判旨:「勤務中の公用端末による行為は職務専念義務違反であり、信用失墜行為にもあたる」として免職処分は妥当とされた。

情報開示請求で職員の行動履歴が開示された事例(福岡高裁平成31年3月12日判決・平成30年(行コ)第2号)

  • 市民団体による請求で、市役所職員の業務端末メールの履歴が一部開示。
  • 裁判所は「業務時間内であり、職務との関連性がある行為についてはプライバシーとは言えない」と明言。

まとめ

  • 公務員には「職務専念義務」と「セキュリティ順守義務」がある
  • 公用PCは職務ツールであり、利用は常に記録・監視されている
  • 公用パソコンの私的利用は情報開示や懲戒処分という形で返ってくる可能性がある

参考法令・資料

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