「生活保護を受けているのは外国人ばかりだ」「外国人に税金を使うなんておかしい」といった投稿が、SNSで目立つようになってきました。
2025年3月の国会質疑以降、特に拡散が加速しています。
しかしその多くが、実際の統計や制度と異なる誤情報に基づいているケースも少なくありません。
この記事では、厚生労働省の公式データや最高裁判例、さらに海外の制度と比較しながら、「外国人と生活保護の本当の関係」について冷静に解説していきます。
外国人の生活保護受給は本当に多いの?
「生活保護を受けている人の3分の1は外国人」という投稿がSNSで拡散されていますが、これは事実ではありません。
実際には、2023年度の厚生労働省のデータによると、全国の生活保護受給世帯数は約165万世帯、そのうち外国人が世帯主のケースは約4万7千世帯で、全体の約2.9%になります。
つまり、「3分の1」どころか、30分の1程度が実態です。
🔗 出典:厚生労働省「被保護者調査(令和5年度)結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2023/dl/00.pdf
このような誤情報が広まる背景には、印象だけで拡散されやすいSNSの特性があります。
正確な統計に目を向けることで、冷静な議論ができるようになります。
外国人に生活保護支給は憲法違反?
「外国人に生活保護を出すのは憲法違反だ」とする意見がSNSなどで見られますが、これは事実とは異なります。
たしかに、2014年7月18日に出された最高裁の判決(平成26年(行ヒ)第44号)では、「生活保護法は日本国民を対象としており、外国人は含まれない」と明言されました。
この判決をもとに「外国人には支給できない」「違憲だ」と主張する投稿もありますが、これは判決の一部だけを切り取った誤解です。
実際の判決では、外国人が生活保護法に基づく法的な受給権(=請求する権利)を持たないことは認めつつも、地方自治体が行政措置として外国人に支給することまでは否定していないと明記されています。
ポイント | 内容 |
---|---|
外国人の法的受給権 | なし(生活保護法は日本国民が対象) |
行政措置としての支給 | 可(自治体が判断すれば支給は可能) |
憲法違反と判断されたか | 否(違憲判断はされていない) |
つまり、法律が改正されたわけではないものの、1954年に出された厚生省の通知に基づき、一定の在留資格を持つ外国人に対しては現在も各自治体の判断で生活保護が支給されています。
そのため、これまでのところ「外国人への生活保護支給が憲法違反と判断された事例は存在せず」、違法でも違憲でもないというのが政府・司法の公式な立場です。
🔗 出典:裁判所公式サイト(裁判例検索)
裁判例検索「平成26年(行ヒ)第44号」
他国ではどうなっている?外国人の生活保護制度を比較!
外国人に生活保護を支給するのは日本だけなのでしょうか?
実は他国でも支給している国と、厳しく制限している国があります。
以下の表にまとめました。
🌍 世界主要国における外国人への生活保護支給 比較表(2025年時点)
国名 | 支給の有無 | 条件・補足(簡潔) |
---|---|---|
🇯🇵 日本 | あり(行政措置) | 在留資格あり+自治体の裁量(法律上は対象外/受給世帯は全体の約2.9%) |
🇩🇪 ドイツ | あり | 永住者・長期滞在者が対象(短期滞在者は不可) |
🇫🇷 フランス | あり | 5年以上の合法滞在者が対象(難民・庇護申請者は別支援) |
🇺🇸 アメリカ | 原則なし | 永住者も5年未満は対象外(州によっては独自支援あり) |
🇬🇧 イギリス | 原則なし | 永住権がなければ公共支援不可(NRPF制度あり) |
🇸🇪 スウェーデン | あり | 永住者や難民も国民と同様の福祉を受けられる(福祉国家モデル) |
🇨🇦 カナダ | あり | 永住者は原則対象、州によっては難民や一時滞在者にも支援あり |
🇦🇺 オーストラリア | 原則なし | 永住者も最初の2年間は生活保護不可(2年ルールあり) |
🇰🇷 韓国 | 原則なし | 法律上は外国人対象外(自治体によって例外的支援あり) |
🇸🇬 シンガポール | 原則なし | 公共支援は基本的に市民限定(外国人には生活支援制度なし) |
外国人に生活保護を支給するのは日本だけではありませんが、国によって制度や制限は大きく異なります。
たとえばドイツでは、永住者や長期滞在者であれば支給対象になります。
フランスでは、5年以上合法に滞在していれば支給される可能性があります。
一方で、アメリカやイギリスは原則として外国人への生活保護支給を行っていません。
イギリスでは「No Recourse to Public Funds」という制度があり、永住権がない外国人には福祉給付が一切許されないケースもあります。
こうした背景を見ると、日本は比較的「生活保護支給に寛容」な国だといえます。
それが良いか悪いかは別として、他国と比べてどうなのかを知ることは大切ではないでしょうか。
なぜ日本では外国人にも生活保護が出るのか?
日本で外国人にも生活保護が支給されている理由は、主に3つあります。
まず、人道的な観点です。たとえ外国人であっても、日本で生活し、困窮している人を放置することは社会としての責任を問われます。
次に、在留資格を持って生活している外国人の多くが税金や保険料を納めているという現実もあります。
そして3つ目は、支給を拒んだ結果、治安や公衆衛生が悪化し、社会全体に悪影響を及ぼすことを防ぐためです。
つまり、生活保護は本人のためだけでなく、社会全体の安定にも関係しているのです。
外国人の生活保護は不公平?「ズルい」と感じる声とその背景
SNSでは「外国人の生活保護はズルい」「日本語も話せないのに甘すぎる」といった声が目立っています。
そう感じるのは、決して異常なことではありません。
生活に余裕がない中、自分が受けられない支援を他人が受けていると、不公平に見えるのは自然な反応です。
特に「母国に資産があるのでは?」「審査が日本人より甘いのでは?」という疑問も、よく聞かれます。
たしかに、日本語が話せないと就労が難しく、支援に頼るケースもあり得ます。
また、海外資産の把握が困難な点など、制度的な「穴」も存在します。
外国人の生活保護は本当にズルい?制度上の問題点と誤解
生活保護は「誰でも簡単にもらえる」と思われがちですが、実際には申請時に厳しい審査が行われます。
収入・資産・扶養可能な親族の有無など、複数の条件を満たさなければ支給されません。
それでも、「ズルしてる外国人がいる」という印象が広がってしまう理由は以下の通りです。
- 実際に不正受給が発覚するケースが報道されやすい
- 一部の外国人が支給対象になった理由が不透明に見える
- 申請に関して、日本人より有利に感じられる要素がある(母国資産の確認困難など)
しかし、これは「制度の構造」に原因があるのであって、すべての外国人がズルをしているわけではないことも理解しておくべきです。
外国人の生活保護はズルい?モヤモヤの正体と制度の課題!
「外国人に生活保護なんておかしい」と感じる声が多いということは、それだけ制度そのものへの不信感があるということです。
その気持ちを「感情的だ」と片付けるのではなく、社会全体で真剣に受け止める必要があります。
重要なのは、外国人を一方的に責めることではなく、制度のあり方や運用の透明性を見直していくことです。
たとえば、以下のような整備が求められています。
- 外国人の資産調査の強化(海外口座などの調査体制の整備)
- 日本語・就労支援の充実(「働けない」からの脱却を支援)
- 支給理由の明確化と公表(納税者への説明責任の徹底)
こうした制度的改善を進めることで、不信や誤解が減り、日本人も外国人も納得できる仕組みづくりが実現していくのではないでしょうか。
制度を変えようとすると「差別だ」と言われる?冷静な議論が必要な理由
外国人の生活保護支給について、制度を見直そうとすると「それは差別だ」「人権侵害だ」といった批判が起こり、議論そのものが封じられてしまうことがあります。
しかし、制度をより公平にしたいという声は「排除」や「差別」ではなく、社会全体のバランスを整えたいという健全な問題意識です。
むしろ、現行制度のままでは外国人が不当に誤解されたり、日本人側に不満が蓄積されたりするなど、双方にとって不利益となる状態が続いてしまいます。
こうした誤解や対立を避けるためにも、差別と制度議論を切り分け、冷静に仕組みを見直す必要があります。
制度改善に向けたオープンな議論の場を設けることこそが、日本人も外国人も納得できる未来につながるのではないでしょうか。
ですので制度を変えたい人はそういった政策を上げてる人に投票するために選挙には行った方がいいですよね。
まとめ
外国人への生活保護支給について、さまざまな意見があるのは自然なことです。
しかし、事実と異なる情報が拡散されると、社会に不信や対立が広がってしまいます。
まずは正確なデータや制度を知り、そのうえで自分なりの考えを持つことが、大切なのではないでしょうか。
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